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- Event
- 2022/9/8
- つばめのたからもの Vol.5
図書館のない町に図書館ができてから、10年。
紫波町図書館が2022年8月31日、
ヤサイの日をもって10周年を迎えました。
2012年8月31日に紫波町で開館した図書館。
本記事を書いている天野は、昨年紫波町へ移住してきましたが、そのきっかけの一つはこの図書館への一目惚れといっても過言ではないほど。
今は、いち利用者であり、そして図書館のSNSを中心とした広報担当でもあります。
この図書館の魅力はなかなか短文では語り尽くせませんが、ひとつの大きな特徴に、「おしゃべりが禁止されていない」という点があります。
館内にはBGMがかかっており、人々が小さな声で立ち話をしている。でも不思議と、うるさいとはあまり感じない。その雰囲気が保たれているのは、図書館の「人と人との交流は大事な情報である」という姿勢によるものでしょう。
話をしているうちに近況や相談事が浮かび上がることもあるそうで、雑談から拾える町の人からの「生きた声」も、この図書館では貴重な情報と捉えられているのです。
地元の有識者から有益な情報やその人たちからのおすすめ本を集めて提示すること、そして一般の方しか知り得ない声も収集して新たな情報を作り出していくこと。提示して終わりではなく、どうやって伝えれば展示コーナーに立ち寄ってもらえるか、どうしたら情報が必要な人に届くか、そんなことが練られた結果が結集している。
町の人が必要としている情報を、司書さんたちが自ら訪ねて取りに行き、得た情報を積み上げていった結果が図書館の本棚にも反映されていく。企画展示から生まれるそんな循環の積み重ねが、今の図書館を作っているのです。
前置きが長くなりましたが…10周年を迎える、その特別な日に企画されたのが、交流型ブース展示「つながる図書館」でした。
交流型ブース展示「つながる図書館」
当日は、図書館に至るところにブースがあり、地元の専門家や愛好家が、「映画」「音楽」「きのこ」「川柳」「鉄道」「鳥」「バレーボール」「歴史」「石」「農業」「酒」……などと担当ブースを構え、来館者さんは直接お話することができるという贅沢な企画。当日のもようはinstagramでもリアルタイムで配信していました。
各ブースのみなさんも趣向を凝らしており、「職人」ブースでは、小田中染工房の小田中耕一さんが、作品ができるまでの工程や道具を見せてくださったり。
「音楽」ブースでは、世界の打楽器や弦楽器、練習用ドラムまで実際に体験できたり、時折ミニライブが開催されたり。
「映画」ブースでは、くじを引いて当たった番号の映画の半券がもらえる「映画くじ」も。偶然引き当てた作品の話題から色々な映画の話に発展するのも楽しい。
紫波町の名誉町民であり、音楽評論家「あらえびす」としても知られた野村胡堂氏所蔵のSPレコードを、手回し蓄音機で聴くことができる体験も。
見るからにきのこ度が高い「きのこ王子」の異名をもつ先生は、きのこにまつわる疑問に本当になんでも答えてくれる。ブースでは、「あなたの好きなきのこは?」のアンケートも実施していました。
(ちなみに1位 マイタケ、2位 ナメコ、3位 シイタケでした!)
誰かの「好き」や、専門性に触れて、知識欲を刺激される。
とても大事なのは、会話を楽しむそのあたたかい雰囲気。
図書館には常時あらゆる資料や本があるけれど、その分野の面白さについて教えてくれる先生がこの日は各コーナーにいたと思うと……!
「こんな図書館ってなかなかないよな」と改めて思います。
振り返ってみると、「学びたい!」という意欲は、誰かの「好き」からの影響が強い気がします。好きなことをイキイキと語ってくれる人と話しているとこちらまで楽しくなってしまうし、「ちょっと気になる」とうっかり思わされてしまう。立ち寄った方の多方面からの質問や素朴な疑問にも答えてくださる姿勢にも、自身が背負うブースへの愛を強く感じました。
「ああ〜今日は一日、楽しかったな」「こんな人としゃべったな」「こんな話をしたなあ」「あの本読んでみたくなったな」「これについて知りたくなったな」……そんなささやかなきっかけが、誰かの果てしない興味の入り口になったかもしれない。そう思うと、なんだかワクワクしてきませんか?
第二部は参加型トークイベント「これから図書館」
第二部のトークイベントでは図書館の10年の歩みを参加者の方とともに振り返りながら「これから」の紫波町図書館がどうあったらいいかを、参加者さんと一緒に考えていきました。
紫波町図書館設立に関わってきた、行政の方やアドバイザー、NPO法人の方などの面々や、地元の中・高生から、近隣の市町村や他県からお越しいただいた参加者もいて、多様な顔ぶれ。
開館日に主任司書さんが涙した…など、開館前夜から10年に至るまでのさまざまなエピソードも飛び出しつつ、なごやかな雰囲気で進んでいきました。
紫波町図書館のアドバイザー・山崎博樹さんからの「これから市民の力がますます必要になっていきます。市民と図書館の関わりをもっと考えるのが大切ですね」という言葉に、利用者としても強く背中を押されます。
会の終盤で、これからの紫波町図書館がどんな場所であってほしいか、という問いかけに、参加者さんからはこんな声が挙がりました。
- 「とりあえず図書館に行こう」と、友達を誘いやすい図書館
- 中高生向けの企画をもっとしてほしい。
- 読書感想文コンクールなどは学校単位の応募なので、中高生のおすすめを、自分の思った魅力で発信できる場があると嬉しい。
- 読書感想文コンクールなどは学校単位の応募なので、中高生のおすすめを、自分の思った魅力で発信できる場があると嬉しい。
- 「利用者としての関わり方」として考えたとき、誰でも参加できるボードゲーム大会や、「社会的処方」の実践が図書館でできるといいと思った。
- いつも変わらず利用者を笑顔で迎えてくれる癒しの場
- 必要不可欠な場所として存在している
- 必要不可欠な場所として存在している
- 本のテーマパーク
- 友達を誘って「遊びに行く」感覚で訪れられる場所であり続けてほしい
- 友達を誘って「遊びに行く」感覚で訪れられる場所であり続けてほしい
- 書く意欲を増す図書館
- 先人資料をどう受け入れるか、まちの「文化」をどう守りつなげるか、相対的に考える必要がある。(図書館に)来ない人をどうするか、地区公民館の機能も考える。
- 先人資料をどう受け入れるか、まちの「文化」をどう守りつなげるか、相対的に考える必要がある。(図書館に)来ない人をどうするか、地区公民館の機能も考える。
- 災害に対応できる図書館
- 命や暮らしが脅かされるときに知恵や学びや力を与えられるといい。100年後の子供たちが健やかに育つ環境づくり。
- 命や暮らしが脅かされるときに知恵や学びや力を与えられるといい。100年後の子供たちが健やかに育つ環境づくり。
- 「図書館に泊まってみたい」という夢がある。
- 本の修理を有償で受け付けるなど、資金調達の手段を考えてみるのもいいのでは。
- 本の修理を有償で受け付けるなど、資金調達の手段を考えてみるのもいいのでは。
- 今後も、今日のようなイベントをやってほしい
まだまだ色々な声が集まっていましたが、どれも今の図書館への想いも込められた、未来を見据えた言葉でした。
紫波町図書館10周年のお誕生日、おめでとうございます!
現在開催中の企画展示
「つながる図書館」ブースに登場した方々がおすすめする1冊と、図書館との関わりを紹介する企画展示「わたしと図書館 わたしの1冊」が、現在開催中です。
一般企画展示「わたしと図書館 わたしの1冊」
展示期間 2022/9/29(木)まで
展示場所 紫波町図書館・一般書フロア
「つながる図書館」の余韻と、図書館10周年の歩みを味わいに、どうぞお立ち寄りください。
■紫波町図書館
「知りたい」「学びたい」「遊びたい」を支援する図書館。
ホームページ:
http://lib.town.shiwa.iwate.jp/
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Instagram:
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■記事を書いた人:
あまのさくや
紫波町とチェコ共和国が好きな、絵はんこ作家・エッセイスト。エッセイ本『チェコに学ぶ「作る」の魔力』刊行。
紫波町図書館で好きな場所は、1階窓際の閲覧カウンター席。
「「紫波町図書館」という、図書館らしくない図書館のはなし」
https://note.com/sukimajikan/n/n3917c29ddef7
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