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- 2023/5/26
- つばめのたまごvol.1
大学生が「今キニナル!」日詰商店街の魅力とは?―みよしぜみ
紫波町には、「好き!」「やりたい!」
という気持ちを原動力に
活動をしている方々が沢山いる。
そんな方々の“大切なたからもの”のような
お話を伺うコーナー【つばめのたからもの】
の中でも若い人々の活躍にフォーカス。
その活気に思わず応援したくなるような
お話を紹介する新コーナー
【つばめのたまご】がはじまります。
表紙全面に大きな俵を持ち上げる男性というインパクトのあるパンフレット「日詰商店街のひと」。
中を開いて見ると、商店街の店主たちの顔が道に沿ってずらり! 圧倒されます。
まさに「日詰商店街のひと」。タイトル通り“ひとの地図”です。
このパンフレットを既に手に取っていたり、ニュースで見知った人もいるのではないでしょうか。
制作したのは、岩手県立大学(以下、「県立大」)の学生たち。彼らは、有志チーム「みよしぜみ」として、2020年から日詰商店街を盛り上げる取り組みを行っています。
なぜ、このパンフレットが誕生したのか?「日詰商店街」には、若い人々に行動を起こさせる“何か”があるのでしょうか?
気になる疑問を解明するべく、「みよしぜみ」の3人(五郎丸千尋さん、齋藤楓さん、高橋静香さん)にお話を伺いました。
今回は、みよしぜみの皆さんと同年代の、つば森編集部・佐藤がお届けします。
「みよしぜみ」とは?
齋藤 みよしぜみはあくまで仮の名称でして、2020年の私たちが大学1年生のときから、有志の団体として「紫波町の商店街を元気にする」という活動をしています。
活動1年目は、イベントを企画しました。2021年の6月に行われた日詰朝市ではさんさ踊りを誘致しました。県立大のさんさ踊りサークルに五郎丸さんが所属していたことがきっかけです。商店街を普段利用している人も、していない人も、特に若い人たちや、家族づれとか、多くの人たちを巻き込みながらさんさの輪踊りも行いました。従来の来場者数が300人ほどだったんですが、結果的に1000人以上が来場しまして、3倍も伸びたんです。
「みよしぜみ」の活動を始めたきっかけは?
齋藤 教授の三好先生と紫波町の方々とのつながりがあり、私たち地域社会科が携わってやってみようということになったのがきっかけです。私の地元が雫石町で、そこで商店街のイベントの一環として「軽トラ市」というのがあって、そこに多くの人が集まっていたので、私自身も商店街を盛り上げる活動に取り組んでみたいという思いを抱いたのが個人的なきっかけです。
紫波町の方々と触れ合ううちに愛着というか、商店街の中心に入って活動したいという思いが募っていったのが、長く活動に取り組んでいけた理由かなと思います。
高橋 高校3年生の時に、当時県立大学生で高校も同じだった先輩が、展勝地(岩手県北上市)の民俗村で地域の交流を生もうという企画をしていて、それに後輩の高校生も手伝いに来ないかという募集をしていたんです。私にとっては大学入試前でしたがちょうどよく学びを得る機会になって、そういう経験がよかったですね。大学に入ってから先生に「外部で色々活動したい、何かあったら声をかけてください」と話していて、先生が今回の日詰商店街の活動に声をかけてくださったので、参加しました。
五郎丸 私は出身が軽米町(岩手県)で、高校生の時に独自で高校生対象にアンケートをとったことがありました。アンケートを見ると自分の町に誇りを持ってない子が多くて、諦めかけているムードというか、この静かな町をどうにかしたいなって思いがあって。この商店街のお話をいただいて、そういうノウハウを身につけたいと思ったのがきっかけです。商店街の方々のパワーや思いを私自身が知って、それをうまく自分の地元に活かせたらいいなっていう思いで参加を決めました。
——それぞれ地元との関わりが発端で、現在の活動につながっているんですね。
パンフレットの制作期間や制作経緯などを教えてください。
齋藤 構想段階から5か月くらいはかかったのかな。
高橋 取材に行ったのが昨年の9月、編集に着手したのが今年3月の初めですね。1か月くらいでデザインはしたんですけど、話し合いのためにちょくちょく商店街に行ったり、商店街の方々が大学に来てくださったり、といった打ち合わせをして半年ぐらいかけて制作しました。
——3人で役割分担したんですね。
五郎丸 今回はもう、高橋さんがメインで(笑)。私たちはマップページの黒文字のキャッチフレーズを考えて、あとは彼女が全部形にしてくれました。
齋藤 裏の「キニナル」のコーナーは高橋さんと私の二人で担当しました。デザインや編集の部分は高橋さんがすごく頑張ってくれたんです。
——このパンフレットの前に「ヒヅメビト図鑑」がありましたよね。
齋藤 このときはですね、みよしぜみメンバー全員で割り振って取材して、デザイン全体は高橋さんがやってくれたんですよね。
高橋 文章の編集は分担して、みんなで書きましたね。撮影も一部しました。
——大学生活の中で、これだけの量を取材して編集までしていたのが驚きです。
——人だけでなく、裏面に日詰商店街のちょっとしたポイントまで紹介されているのが細かくていいなと思いました。このお店に猫がいる話とか、驚きますよね。
高橋 びっくりしました、ほんとに知らなくて。めっちゃいたよね!
齋藤 すごいかわいくて。
五郎丸 10匹くらいいたよね(笑)
——そういうちょっとした気づきも「行きたい!」と思うきっかけになっていて、いいですね。
「ひとに会いにいけるひづめぐり切符」に込められたメッセージ
——表紙の「ひづめぐり切符」という言葉は誰が考えたんですか?
齋藤 この前の案をみんなで考えたんですけど、これはみんなの意見をミックスして最終的に出来上がったんですよね。中には思い切りダサいと言われた私の案がありまして…(笑)
高橋 最初は「街歩きマップ」みたいなのにしていたんですけど、だんだんなんか違うなってなって、どうしようってみんなに聞いたら…なんだっけ(笑)
五郎丸・齋藤 スマイルパスポート!
齋藤 「笑顔に出会えるひづめぐり」ってことで(笑)。
高橋 みたいな、ちょっと古臭い案が出て来ちゃって(笑)。
五郎丸 そこから私が、「青春18きっぷ」にかけて、「ひづめ35きっぷ」はどうか、って話したり。
高橋 それを編集して、くっつけて、こうなりました。
——いいですね!
高橋 商店街の方からは、「通行手形みたいにしてほしい」と要望があったんです。
齋藤 コンセプトとして、買い物しなくてもふらっと入れるようなものがいい、という軸になってまして。
五郎丸 これがあれば、特に買い物しに来たわけじゃなくて、ただ来たよって店主さんもわかる目印になるようにっていう。
高橋 入ったらなんか買わないと出られない、みたいな入りにくいムードがあるので、そういうのを払拭したい、もっと気軽に入ってほしいっていう思いがあったのかな。
——取材したことで、店主の方々もこのパンフレットがあることを知っていて迎え入れてくれるだろうし、お客さん側も店主さんたちの顔が分かっているので、さらに入りやすくなりますよね。
高橋 中身にはあまり親切すぎる説明は入れず、あえて余白を残しました。店舗情報を書くという感じではなくて。町内に設置配布されている別の「日詰おさんぽマップ」と一緒に照らし合わせて、場所も大体このあたりだなとか分かるので、自分で見て歩いて探すのがよいのではと。調べたら分かる部分は書かないで、逆に調べても出てこない情報を出さないと、パンフレットを作る意味がないと思いました。
制作の裏に、商店街の人々の支えあり、ストーリーあり
——この表紙がまたインパクトがありますね。この写真にした理由や、込めた思いは?
高橋 写真の人は、商店街の方々から素材としていただいたものから選んだ、「野村米殻店」の野村さんですね。野村さんの写真も、すごく笑ってるものと真剣な顔で米俵を抱える写真がありました。他にもいい写真はたくさんあったのですが、アンケートを取ったら満場一致でこちらになりました。
齋藤 こっちの方がインパクトがありますね。
五郎丸 未来を見据えている。これまでもこれからも商店街の未来を担っていく、担いでいきますよ、みたいな頼もしさもありますよね!
齋藤 ご本人からは「おしょす(恥ずかしい)」と言われましたね。あと「こんなじさまつかっていいだべか」って(笑)
——人と人との関わりが目に浮かんでくるみたいで良いですね。
パンフレット配布後の反響や変化は?
齋藤 配布してまだ間もないので、これからですね。商店街ではすごく反響が大きいと聞いています。
五郎丸 私の先輩がニュースで見て、何部か欲しいって言ってくださって。行きたいっていう声もあったのですが、学校側で配ることがまだできてないので、良い感じに届けることができれば、 もうちょっと若い人とか、学生に広がるかなと。
——わざわざ「日詰商店街」を目指して来る人が増えるかもしれませんね。
このパンフレットをきっかけに起こって欲しいことは?
高橋 興味を持ってもらうだけでも、こういう商店街なんだなと思ってもらえるだけでも、全然良いと思います。
齋藤 新しく商店街に入ってきたお店、このマップで言うと「オシャレ店長バルタン・タカハシ」という床屋さんとか、あとは駄菓子屋をオープンした方もいらっしゃいます。このパンフレットをきっかけに人が来たり、新しくお店を出してみたいと思う人がいればいいなと。世代交代が起こっても、存続していってほしいなという思いはあります。
大学生のうちにやりたいことを、行動に移すことができた秘訣は?
齋藤 私は笑顔ですかね。笑顔をもらうことがモチベーションになっていました。ありがとうっていう感謝の言葉をいただいた時に、ああ、やっぱりやってよかったな、これからも頑張れるなと思いました。
高橋 私は直近に就活があって、デザイン会社を受けていることもあり、メディアや広告に直結することなので、積極的に引き受けました。デザインについては独学なんですが、専門で学んできた人たちと戦うことになるので、実践が一番いいなと思って、どんどん実践を積んでいこうと思いました。学外の活動で人脈も広がりますし、お仕事もいただけるので、とにかく実践経験を積もうっていう意識がありましたね。
——デザインはもともと興味があったんですか?
高橋 もともと、ペーパークラフトとか、コラージュとか趣味でやってたんです。みよしぜみのイベントで、朝市のさんさ踊りのポスターとかちょっと作ってみよう、くらいの気持ちでやっていたら、当初は仕事にする気はなかったんですけど、仕事にしてもいいなと思い始めました。
——日詰商店街の活動きっかけで、進路にも変化があったんですね。
五郎丸 私は人かなと思ってて。人と話すのがもともと好きで、商店街のみなさんが今までの話し合いで「これいいね!」とか、「これもっとこうしたい」というのを積極的に言ってくれて。それをすごく楽しそうに語ってくれて、すごいニコニコして目をキラキラさせているんですよ。それがすごい楽しくて、そういう話を一緒にできるのがモチベーションというか。もっと自分も何か出したい、もっと自分も関わりたいっていうところに繋がっていって、ずっと活動してこれたと思います。
——やっぱり活発な人々との関わりが原動力なんですね。
大学生たちの活動の源は、日詰商店街をはじめとした周りの人たちのあたたかさだった。
時は絶えず進み、世代はどんどん変わっていく。
だからこそ若い人たちにも、このパンフレットに載ってあるような、細かい「良いところ」に気づいてもらえたら。
今活躍している人たちに続いて、将来紫波で好きなことに挑戦したいな、と感じてくれたら、それは立派な勇気。
これからも、紫波を取り巻く活発な取り組みや、次世代を担う若者たちから目が離せない。
話を聞いた人
みよしぜみ
岩手県立大学総合政策学部所属の4年生(五郎丸千尋さん、齋藤楓さん、高橋静香さん、海老澤瑠維さん)による有志チーム。
学部の三好教授のもとで2020年から、紫波の日詰商店街を元気にする活動を行っている。
パンフレットは2万部発行し、町内のいたるところで入手できる。
記事を書いた人
佐藤遥華
紫波町出身。岩手県立産業技術短期大学校を卒業後、令和5年度から紫波町タウンプロモーション推進員に着任し、つば森編集部へ加入。趣味はサイクリングやゲームなど。
在学時の卒業研究では、紫波と自転車といった好きなものを掛け合わせた観光促進サイトを制作した。
卒業研究制作サイト「S×C×R」:https://sh21410.github.io/SCR/
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