つばめのたからもの Vol.1

映画好きの有志団体ーシワキネマ

紫波町には、自分が持つ
「好き!」「やりたい!」という気持ちを
原動力に活動をしている方々が沢山いる。

そんな方々の大切なたからものを
見せていただく気持ちでお話を伺うコーナー
【つばめのたからもの】、はじまります。

自分たちが見たい作品を上映する

「シワキネマ上映会」というポスターを紫波町内で見かけた時、ふと嬉しくなった。

私は映画が好きだ。盛岡まで行けばあるものの、現在紫波町内には映画館がない。
いや、町内に映画館がなくても、映画が好きな人が近くにいて、上映会をしている。その事実だけでも十分うれしかった。


そのポスターの情報を頼りに、少し勇気を出してイベントに足を運んでみたら、自分の“好き”とつながる思いを持っている人たちと出会えた。そうか、町での暮らしって、こうやって楽しくなるんだな。

ポスター越しに出会えた、映画好きの有志団体”シワキネマ”。
2015年の第1回目を開催して以来、 2021年11月の上映会で第20回目を迎えた。

(左から、小田中さん、熊谷さん、手塚さん、岩舘さん。メンバーは全員紫波町内で働いている。
以下敬称略)

シワキネマはどうやってはじまった?

手塚:以前、町図書館の企画で、色んな人の協力で、“SHIMAP”という町の地図を作るプロジェクトがあったんです。このプロジェクトメンバーで、何か他の企画もやりたいねという話が持ち上がる中で、その候補の一つに映画上映がありました。やがて『ある精肉店のはなし』という映画を上映したい!という声が上がり、そのために実行委員会が発足して、手塚、熊谷、岩舘はそこに入っていたんです。

熊谷:上映会を開催するにあたり、幅広く声をかけて協力を仰いでいったのですが、以前より仕事で付き合いのあった小田中さんが、実は大の映画好きで、盛岡で映画上映会を企画されていることを知りました。それまで仕事の話しかしてなかったんですけど、これは!と思い実行委員会にお誘いしました。

手塚:第一回の上映が終わった後、実行委員会を一回限りではもったいないよねと話しているうちに、あの映画だったら上映料がかからないかも…などと話すうちに、自然と第二回目以降の上映が決まっていきました。

岩舘:映画を作っているひとが身近にいたりして、先輩後輩という縁で上映できた映画もありましたね。

小田中:団体名を“シワキネマ”と名乗り始めたのは第二回目からです。有名な映画雑誌をもじって、『シワキネマ旬報』というフリーペーパーも作りました。

自主制作の『シワキネマ旬報』。不定期発行でイベント参加者に無料配布される

熊谷:オガールの情報交流館の中に、“大スタジオ”という、映画上映に最適な場所もあったし。

小田中:ちょうどその頃、町内のレンタルショップがなくなったりして、それも大きかったですね。映画を見る文化を絶やしちゃいけない、という思いも少なからずありました。

主な活動は、紫波町内での映画上映会

手塚:不定期で映画上映をしていますが、上映会後には基本的にトークイベントも開催し、時には監督をお呼びしたり、その映画が好きな方を交えてゆるく話しています。

小田中:映画に関係あること・ないことまで(笑)。

手塚:本当にゆるいですよね(笑)。コロナ禍以前は、コーヒーやお菓子の移動販売を行うこともありました。お客さんは半分くらい町外からいらっしゃることもあります。

また、自主映画上映を行う「映像アートマネージャー養成講座」と連動した企画や、チャリティー上映を行うこともまれにあります。

過去の上映会ポスター

過去に上映した作品は、『ストップ・メイキング・センス』、『エル・スール』、『道』、『バンデットQ』、『追憶』、『(ハル)』、『人生フルーツ』、『タイマグラばあちゃん』『過去のない男』、『恋恋風塵』など。

上映作品はどうやって選ぶ?

小田中:たとえば『(ハル)』という、紫波町が舞台になった映画を上映したこともあります。1996年に劇場公開された深津絵里さん主演、森田芳光監督(『家族ゲーム』、『失楽園』など)の映画です。映画としても大好きですが、撮影当初の22年前の懐かしい風景を見て楽しめるのは、地元に住む者としての特権ですよね。あとは監督の生誕記念とか、追悼で特集することもあります。

ポスター・チラシ・チケットなども、メンバーがデザイン・制作している

岩舘:第20回目は、2021年に公開された『アメリカン・ユートピア』という映画にメンバー一同が夢中になって、その関連作である1984年公開の『ストップ・メイキング・センス』を見たい!という思いを形にしました。当日は某メンバーの秘蔵コレクションも並びました(笑)。

小田中:入場料のみで運営しているので収益も基本的にないですし、この作品を誰かに観てほしい!という使命感よりも観たい気持ちが優先です。「これを見たいんだけど」とみんなにお酒を注ぎながら推薦したりもしますが(笑)。なるべくみんなで見たいやつを選んでます。

また、岩手での上映予定がなく、DVD化などの予定もなかった『さすらいのレコード・コレクター~10セントの宝物~』という映画を、レコードの街・盛岡で上映する会を開催したことも。レコードを聴き、カツ丼を食べて映画を観るという、とても贅沢な企画になりました。

「収益もゼロだし、役に立つとかそういう使命感に動かされるのではなく、結局それぞれが好きなものを出した先にいい社会になりそう。」
メンバーの一人が、ぼやくようにつぶやいた。
そして好きな映画を一緒に見て、お酒をのみながらあーだこーだ話すその時間が、たまらなく楽しいという。

第20回上映会終了後、シワキネマメンバーと観客有志との集合写真

紫波町には、“好き”・“やりたい”という気持ちを原動力に活動する人たちがいる。

“好き”でつながる縁は不思議な強さを持っていて、他にはかえがたい。

自分の“好き”が誰かの“好き”とつながったら、きっと日々はもっともっと面白くなる。

話を聞いた人

・シワキネマ

映画が好きな有志が集まり、不定期で映画上映を企画しています。

Facebookページ:
https://www.facebook.com/shiwakinema/

記事を書いた人

・あまのさくや

絵はんこ作家・エッセイスト・紫波町地域おこし協力隊。
初のエッセイ本『32歳。いきなり介護がやってきた。』を刊行。


紫波移住日記note:
https://note.com/sukimajikan