つばめのたまごvol.3

紫波から駆け出したアーティストのたまご

紫波町には、「好き!」「やりたい!」
という気持ちを原動力に
活動をしている方々が沢山いる。

中でも若い人々の活躍にフォーカス。
その活気に思わず応援したくなるような
お話を紹介するコーナー
【つばめのたまご】。

紫波の広報誌やポスターなど、町中で見かけるイラスト。
そのうちのいくつかは、もしかすると「どぅき」さんが手掛けたものかもしれません。
グラフィックアーティストを目指し活躍する、その若者に迫ります。

グラフィックアーティストのどぅきさん

どぅきさんは、岩手県立産業技術短期大学校(以下、産技短)の産業デザイン科出身で、オガール合同会社へ新卒で入社。今年8月に開催された「オガール祭り」のキービジュアルを手掛け、ポスターやグッズのデザイン、サバが描かれたロゴなど、すべて一人で制作。その他、チラシやバナーの制作など仕事は多岐にわたります。
現在は紫波町に住みながら、グラフィックアーティストの活動をメインにSNSなどで作品を発信しています。実はこの記事を書いているつば森編集部の佐藤は、どぅきさんと産技短時代の同期でもあります。そんな彼女にこれまでとこれからのお話を伺ってきました。

オガール祭り2023ポスター
サバが描かれたオガール祭りのロゴ

「オガール祭り」のビジュアル制作はどのように進めたのでしょうか?

どぅき 依頼をいただいた際、絵柄などの指定はなくお任せだったので、方針を自分で考えて、最初に2案ほど描きました。近年紫波町に引っ越してきた関係で、オガール祭りには参加したことがなく想像するしかありませんでした。なので行ったらこうなのかな、自分ならどう過ごすかな、こういうところなら行きたいな、というイメージで制作しました。

イベントの様子を想像するために何か試したことは?

どぅき 来場者の立場になるために、オガールのクレープ屋さん前のベンチでサンドイッチを食べながら音楽をかけてぼーっとしてみたり。過去の動画を見て参考にしたり、ある年は演奏者が勝手に演奏し始めてドイツのビール祭りのように大盛り上がりしたことも聞きました。
そうして、オガール広場の草っ原と白いテントを背景に、「好きにお酒を飲み、それぞれの自由な時間を楽しむ大人たち」を主役にしたイメージができました。自由な大人たちをたくさん描きましたが、それぞれの人は目を合わせていません。依頼してくださった岡崎さん(株式会社オガール代表取締役)がこの絵を見たとき、有名な絵画「グランド・ジャット島の日曜日の午後」のようで、イメージ通りだと言ってくださりました。示し合わせたわけではなく、イメージが一致したのが予想外でした。

誰もが自分の時間を楽しみ、登場人物同士やこちらの目とも合わないというキービジュアル。

今回のビジュアルには、アートとして描く絵と違いがありましたか?

どぅき 第一に大衆が見て嫌な気分にならないように意識しなければならないと思っていましたが、どうしても自分の絵柄が出るので、自己表現をしつつ不快にしないという、デザインとアートの半分ずつの方針で作りました。デザインとしての工夫は、例えば配色で、時期は夏だけど暑い中で冷たいビールが飲みたくなるような涼しさと、草っ原と白いテントの色合いを生かすために、寒色を多めに取り入れました。

クラウドファンディングや、オガール祭り当日の反響は?

どぅき Tシャツはクラウドファンディングの御礼として制作しました。目標額はすぐに達成したので、イベントを盛り上げるというキービジュアルの目的を達成できた実感がありました。クラウドファンディングの支援者からたくさんのメッセージをいただきましたが、そのほとんどがオガール宛でした。なので、当日まで他人事のように感じていましたが、会場でTシャツを着ている人を見てやっと嬉しさが湧いたんです。想像のビジュアルと現実のオガール祭りの答え合わせみたいでドキドキしましたが、割と間違っていなかったなと安心しました。

クラウドファンディングの御礼品Tシャツ
イベント当日はかき氷屋台のスタッフを担当していたどぅきさん。実は作者本人が屋台に立っていました。

絵の仕事でやりがいや、手ごたえを感じているということですね。

どぅき 当日会場でTシャツを着ている人たちが、「これ、かわいくない?」と言いながら歩いていて、その作者が目の前にいるのも知らずに、素で感想を述べてくれているのを聞けて楽しかったです。作者を知ってしまうと大体は人を褒める感想になると思うので、(作者を名乗らないことで)自然に出た感想を受け取る楽しさや、やりがいを知ることができました。様々な人から反応をいただくことができたので、トータルでは成功です。反省点もたっぷりの成功で、失敗ではないですね。

苦労したところは?

どぅき ビジュアルを描くだけでなく、ポスターのレイアウト、グッズ展開、ロゴデザインなどすべて一人で担当したところです。必ずしも周りにデザインに詳しい人がいるわけではなかったので、いかに自力でできるかが試された機会でもありましたし、今後の課題です。 そのこともあって、クラウドファンディングのグッズのコップには「はじめまして、カンパイ」と印字するはずでしたが、「はじまして」という誤字に誰も気づかず印刷されてしまいました。何百人の人がこれでお酒を飲んだのかと思うと、盛大にやらかしてしまった!と思いました(苦笑)。今後は確認をしっかりしなければという教訓になりましたね。

クラウドファンディングの御礼のコップ。どぅきさんもこのコップでお酒を飲み、「自作のコップで飲むのは特別で、不思議な感覚」と述べています。

絵を仕事にしようとしたきっかけは?

どぅき 幼少期から元々絵を描くのが好きで、高校も芸術科で絵の勉強をしていましたが、その時は絵の仕事は現実的に難しいと思っていました。産技短で仕事にするためのデザインの勉強をし、アートとデザインの絵と半々で仕事にできればいいなという考えでした。

デザインの仕事を経験してみて、好きな絵を描く時間がなかなか取れなくなることに気づき、アートの絵を仕事にする方が自分らしく幸せに生きられると、はっきり分かったんです。自分の絵で誰かの人生が変わることにも関われたらもっと最高だと、やっとそういう気持ちになれましたね。母にも相談したら、好きなようにやりなさいと言ってくれたので、実家でそういった生活をすると決めました。周りに受け止めてくれる環境があったのも大きいです。

紫波町へ引っ越した経緯は?

どぅき 私の進学と母の仕事の独立という、家族の節目がちょうど重なった時に引っ越ししました。紫波町の赤沢地区に住んで2年目になります。基本的にオフィスより自宅で作業することが多いですね。母の「みそたろう」も、自宅の工房で制作しています。

どぅきさんの自宅での作業の様子

「みそたろう」とは?

どぅき 母は陶磁器作家「みそたろう」として、和風、東洋風の雰囲気を持った器をつくっています。最近では、盛岡市のワインバーで仕事をした経験から、ワインカップの制作もしています。りん工房とmiso potterという二つの窯で、器と日々向き合っています。
アーティスト駆け出しの自分にとって、母は一番身近なアーティストです。母の知り合いからは「おみそ」と呼ばれていて、それを真似して自分も「おみそ」と呼ぶくらい距離が近い間柄だと思います。

どぅきさんの母・みそたろうさん。親子で作家活動をされています。

引っ越してから2年。紫波町の印象は?

どぅき 本当に素敵な町だと思います。古い建物や商店街が残り続ける中、人々が当たり前に生活している姿に考えさせられ、ノスタルジーを感じます。特に夏は緑にあふれていてゆったりとした気持ちになるので、散歩や妄想・構想タイムにちょうど良くとても好きです。普段はずっとデスクワークの日々なので、外に出て道路と田んぼと山しかない景色を見ることで「仕事から離れた」を実感でき、静かに癒されます。産直やご近所さんからいただく野菜や果物は美味しくて、それを料理して家族と食べると豊かな気持ちになりますし、生きていることを実感できますね。

紫波町でやりたいことはありますか?

どぅき 町内のイベントに出店して色んな人と交流してみたいですね。以前、ポートレートモデルをしたこともあり、紫波で何か撮影モデルをしてみたいなと思ったり、ライブペイントなどアーティストとしてやってみたいこともあります。個人的には、喫茶店制覇や、古着屋さん、温泉、美味しいもの巡りをしてみたいですね。実はまだ日詰商店街をまわりきれていないので、少しずつ叶えていこうと思います。

新卒で早くも色々な経験をしてきたどぅきさんですが、今後の活動は?

どぅき 今回のビジュアル制作で、人によって変わるそれぞれの解釈を広められたように、今後も自分の絵でもっと色んな人に「いい感覚」をシェアできたらいいなと思っています。例えばコップであれば、無意識になんとなく良いなと思いながら使う人がいるかもしれないし、これはどぅきちゃんが作ったんだよねと意識して使う人もいる。自分が作ったものが様々な人の手に渡り、それぞれの感覚で良さを感じ取ってもらえる絵を描いていきたいです。

アーティスト活動について、笑顔で語ってくれたどぅきさん(左手前)

一人の若いアーティストの描く紫波町には、自由を楽しむ人々が映っていた。
“若者がチャレンジする町“は、自由を尊重しながら様々な分野で広がり、盛り上がりが続いていく

話を聞いた人

どぅき

盛岡市出身。2年前に紫波町に引っ越し、グラフィックアーティストとして一歩を踏み出した。

独自の感性で、なめらかな曲線にメッセージを込めた人物たちを描く。

Instagram:https://www.instagram.com/duki_oki/

 

話を書いた人

佐藤遥華

紫波町出身。岩手県立産業技術短期大学校を卒業後、紫波町タウンプロモーション推進員に着任し、つば森編集部へ加入。

絵を描くのが好きで、どぅきさんをはじめ、色々な作家さんに憧れがある。

 

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