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- Event
- 2023/12/28
- つばめのたからもの vol.9
この先の百年をつくる「ひづめ百年文化祭」
紫波町に住んでいても、いなくても
誰もが楽しめて、
このまちをもっと好きになれる場所
「つばめの森」。
このまちで起きていることに触れると
もっともっと、このまちでの暮らしを好きになるかもしれない。
今回は、2023年11月11日(土)・12日(日)に
日詰平井邸で行われた
「ひづめ百年文化祭」のようすをお届けします。
日詰商店街の入口にあって、日詰のまちの百年の歴史を見つめてきた、国指定重要文化財の平井家住宅。
新たな挑戦も生まれているこの場所で、これからの百年を作っていく起点となるように、イベントのスローガンは「みんなのぶんかさい!」と掲げられました。
その名前が表す通り、当日は郷土芸能をはじめとし、マルシェやワークショップ、コンサートやeスポーツ大会など、内容もりだくさんの文化祭となりました。
ー 華やかな郷土芸能の披露
今回のイベントの目玉の一つが、「郷土芸能」です。
岩手県内には、神楽、田植踊、鹿踊り、さんさ踊りなど、今でも多くの郷土芸能が受け継がれています。
その中で今回は町内から「山屋田植踊」と「日詰かじ町さんさ」と、町西部の志和地区が八戸藩に属する飛び地であった歴史も踏まえ、青森県八戸市から「東十日市えんぶり」それぞれの団体さんをお呼びして公演が披露されました。
かつての郷土芸能は、地域の家を回って、門口で歌や踊りなどの芸を見せ、報酬としてお金や食べ物をいただく「門付け(かどづけ)」として披露されていました。
たとえば農家の方が、農閑期は踊りや芸を磨いて、まちを門付けしてまわって踊りを見せ、その見返りとしてご祝儀をいただく。農村部の方にとっては自身の芸が農閑期の出稼ぎとなり、町場の方にとっては、門付けを呼び、ご祝儀をお渡しする行為が自身の権威を示すステータスとなりました。そうして門付けは、町場と農村との交流の象徴として特に大切にされてきたといいます。
日詰平井邸という「家」の門の前で披露された東十日市えんぶりは、まさに「門付け」の素晴らしい実演となりました。
また、紫波町の山屋地区で続く「山屋田植踊」は、かつて原敬首相が訪れた平井邸二階の大広間にて披露されました。えんぶりと同様に「予祝」行事であるとされる田植踊は、実際に収穫するよりも前に、予め祝うことで、豊作祈願と、天候不良や病害などによる不作を防ぐ除災の意味も込められています。
かつて農閑期の冬の娯楽はもっぱら田植踊であったという噂の通り、独特の動きと間合いで笑いを誘う演目もみられたり、花笠を美しく回転する「笠ふり」はっと息を飲むほど迫力がありました。
またイベントの2日目には、日詰で80年以上前から続く「日詰かじ町さんさ」が登場し、造り蔵にて輪踊りが行われました。イベント前日に日詰小学校で開催したワークショップに参加された生徒さんも当日飛び入りで参加。少し照れくさそうにしながらも、楽しそうに踊っていました。
ー 音楽に満ちた日
2日目の日曜日は、「String Ensemble Iwate」による弦楽合奏からはじまりました。
和室の大広間で聴く弦楽合奏は廊下まで気持ちよく響き渡ります。
お子さま連れの方も多くいらっしゃり、音楽の中で踊ったり走り回ったりする子どもを微笑ましく見る風景ごと美しい時間。
そして津軽三味線奏者「藤原翼」さんの演奏。三味線の音色はどこまでも平井邸の雰囲気にマッチします。
急遽本来の時間以外にも、階段部分でゲリラライブを開催してくださり、これにはお客様はもちろん、なかなかお店を離れられないマルシェの出店者さんも大喜び。
午後には楽器演奏の体験で楽器を触れる時間もありました。「子ども含め、なかなかコンサートや楽器に触れられる機会がなかったので、子連れで楽しめてよかった!」という声も。
ー「しる、みる、さわる。やってみる。」体験の充実
ひづめ百年文化祭のキャッチコピーは「しる、みる、さわる。やってみる。エンジョイ文化!な二日間」。造り蔵では、二日間を通して「だれでも絵を描けるワークショップ」が開かれました。
このワークショップは二日間、子ども向け、大人向けの時間も合わせて行われました。
はじめは親御さんの表情を不安そうに伺っていた子どもたちが、徐々に解放されて新しい画法を生み出したり、前のめりにどんどん描き出す大人がいたり……。
参加者のみなさんは、仕上がった作品を前になんだかスッキリした表情をされていました。
二日目には、岩手eスポーツ協会主催の小学生向け「大乱闘!スマッシュブラザーズ」eスポーツ大会が行われました。時間外では同ゲームと「太鼓の達人」で遊べるとあって、子どもたちや、郷土芸能の踊り手さんたちまで(!)ワイワイと立ち寄られていました。
ー個性あふれる「ひゃくぶんマルシェ」
当日は30組を越える町内外の個性的なお店が集う「ひゃくぶんマルシェ」も開催。
飲食や雑貨の販売やワークショップ、アート作品の展示などが所狭しと軒を連ねました。
邸内をくまなく歩き回り楽しまれるお客さんもなんだか楽し忙しそう。
到底ご紹介しきれませんが、一部を写真でご案内します。
ー地元の高校生の参加
今回は出店者・出演者・ボランティアスタッフとして地元の高校生も参加されていました。
また、今回のイベントで繰り返し伝えられていたのは、「お花(ご祝儀)文化を伝える」こと。
入場時には来場者全員に、オリジナルののし袋が配られました。
当日は会場で宛名書きをできるコーナーを設けたり、公演を見て追加でお花を渡したいという方にも追加の販売をボランティアスタッフがお声がけしていました。
いざ渡す!と思ってもなかなかそのタイミングは難しかったり、でも勇気を出して渡したら演者さんが公演中に名前を読み上げてくれたり。とても喜ばれたり。
「はじめて渡せました!」とほくほくした表情のお客さんもみられました。
出店者さん、出演者さん、ボランティアスタッフさん、それぞれが合わさった活気あふれる空気に引き寄せられるように、当日は多くのお子様連れのご家族や学生さんを含め、二日間を通じて、900人以上の方でにぎわった「ひづめ百年文化祭」。
見たり聴いたり、触れてみたり、作ってみたり、さまざまな体験に満ちた二日間でした。
作品やワークショップ、公演を通じて、ちょっと好きになったこと、気になった景色、音、香り、感触。一つでも持ち帰ったそんな小さな感覚が、百年後のひづめを作っていく。
そんな未来を感じられる日となりました。
■記事を書いた人:あまのさくや
作家。著作に『32歳。いきなり介護がやってきた。』(佼成出版社)
『チェコに学ぶ「作る」の魔力』(かもがわ出版)
『はんこ作家の岩手生活(上)』(生活綴方出版部)がある。
「ひづめ百年文化祭」実行委員長。
Instagram:https://www.instagram.com/sakuhanjyo/
■ひづめ百年文化祭
主催:
ひづめ百年文化祭実行委員会
ー 天野咲耶、岩舘岳、平井佑樹(日詰平井邸16代目)、川村真央、佐藤省吾、須川翔太、南條亜依、森川高博 (50音順)
アーツライブいわて実行委員会
NPO法人いわてアートサポートセンター
公益社団法人日本芸能実演家団体協議会
共催:
岩手県、紫波町、紫波町教育委員会
イベント詳細:https://iwate-arts.jp/archives/4610