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- Note
- 2022/3/20
- 夢見るつばめ vol.1
つばめの森の、カメラの木
この森には、いくつもの木があって、
「好き」「やりたい」という
まっすぐな気持ちの幹を軸に、
それぞれの色を放っていきます。
たくさんの色の木が集まることで、
森は豊かに彩られ、つばめが更に楽しそうに飛び交っていくのです。
インスタグラムで紫波町のことを調べようとすると、実にたくさんのアカウントが検索結果に並びます。
町の公式アカウント、飲食店を集めたグルメアカウント、商店街のことを発信するアカウント。その中に、ひとつ気になるアカウントがありました。紫波町写真部(@shiwapic)です。
このアカウントは、投稿内容に運用している中の人は登場しません。
誰が運用しているかはわからないものの、3万3千人の小さなこの町で、3300人を超えるフォロワー数となっていることは、ちょっとすごい。
実はこの紫波町写真部(@shiwapic)を運用しているのは、我がつばめの森編集部の伊東であることを、この場を借りて告白しようと思います。
なんとびっくり、あなただったの?!という声が画面越しに聞こえてきそうです。
そして何を隠そう、この記事を書いているのも伊東本人であることもお許しください。
趣味で始めた小さなことが、地道にコツコツ大きくなり、こうして皆様にお伝えできるまでになったことを本当に嬉しく思っています。
さて、@shiwapicのアカウントを開設したのは、令和がスタートした年の夏休みのこと。
高校生の頃から写真を撮ることが趣味で、個人のインスタグラムアカウントは5年ほど前からやっていました。
紫波町出身ではないし、当時町内在住でもなかったのですが、この町が大好きで、温泉や神社に行きがてら写真を撮りに通っていました。毎週のように増えていく町の写真を眺めながら、同じ思いを持つ方と写真コミュニティのような活動ができれば、紫波町の魅力をたくさんの方と共有できるなと思い、新しいアカウントを立ち上げました。
この町では本当にさまざまな方が、それぞれのアカウントで町の情報を発信しておられます。
活発で賑やかで、それはそれで大好きなのだけど、情報が散らばっているという課題も感じていました。町に関する情報を、ハッシュタグを活用して集約をすることができれば、町内外の方に町の情報をより整理した形でお届けできるかもしれない。あわよくば掲示板としての役割も担えれば、とっても素敵だなと思い、「#shiwapic」というハッシュタグを掲げてアカウントは走り出しました。
@shiwapicはアカウントの冒頭で自らの活動内容をこのように紹介しています。
「写真と音で紫波を楽しむサークルマガジン!紫波町に住んでいる人、通っている人、旅で来た人、家族がいる人、思い出がある人、みんなが部員です。紫波町のいいところ、フォトジェニックな場所、おいしいもの、魅力的なひと、町からのインフォメーションも、まるっとここみて!」
冷静に見返すと、どんなハイテンションな自己紹介だよと突っ込みたくなりますが、アカウントを立ち上げたあの日は、意外にも落ち着いていたと記憶しています。自分が考えている通りになるのか不安だったのと、これがうまくいかなかったとしても、自分が何か行動を起こさないといけない任務のようなものを勝手に感じていました。
紫波町写真部という名のり方をしてはいますが、入部の申し込みが必要なわけではありません。必要な作業は、このアカウントの想いに共感していただき、ハッシュタグ「#shiwapic」をご自身の投稿に付けるだけです。そうすることで、私が後日ハッシュタグを辿って皆様のことを発見し、ご連絡をさせていただいた上で、リポスト形式で紫波町写真部のアカウントに掲載されるというシステムです。インスタグラムのアカウントを持っている方は、ぜひお気軽にこのハッシュタグを探してみてください。驚くほどたくさんの紫波町の情報が出てきて、眺めているだけでも楽しい気分になります。
紫波町はとにかく美しい町です。
自然豊かで、どこを撮っても絵になるような町。
イタリアに旅行に行った時にも同じようなことを思いました。「この町はまるで日本のトスカーナのようだ」と言った人もいました。そういう話を町の人にすると笑われますが、私は本当に思っています。
毎日違う表情を見せてくれる紫波の風景は、目の前の自然が「生きている」ことを教えてくれるようです。同じ道を毎日同じ時間に通っているはずなのに、田んぼや畑の小麦は刻々と色を変えるし、奥に見える山並みも、空の雲も、気温も香りも全然違います。都会のビル街では感じられない感覚を、贅沢に提供してくれるのです。
そして、この町の人。
温かく、家族のように接してくれる、というありふれた表現では足りない魅力があります。
この町を想う力がものすごいのです。
@shiwapicにもすぐにその力が及びました。
アカウントを開設し、自己紹介を書き終わった時点で、もうフォロワーが数人現れたのです。
正直、焦りました。まだ何も投稿はしていないのに、自己紹介の文章からこのアカウントのやろうとしていることを読み取り、共感してくれたのだと言います。
最初にフォローしてくれた高校生の男の子のメッセージがとても印象的でした。
「この町が大好きで、まちづくりに興味があるんです。お手伝いさせてください」
そう言って、星空の写真を提供してくれました。
まちづくりって、どこか遠くて手の届かない言葉だった私にとって、
一気に身近に、そして現実的なものに変化した瞬間でした。
星空の写真を投稿すると、今度はその写真に「きれいですね」とすぐにコメントをくれる人がいて、お互いに知らない人同士が「こんな景色を実際に見てみたい」「みんなに見せたい」と言い合いました。
紫波町出身で現在は関東に引っ越したフォロワーさんからは「遠く離れていても、こうしてふるさとの景色をリアルタイムで見れることに幸せを感じる」と温かいメッセージをいただきました。
そんな風に、今自分が見ている風景や感じていることを「おすそ分けしたい」という優しい気持ち、そしてそのおすそ分けへの感謝の気持ちでこのアカウントは成り立っているんだと思います。情報の集約をしようと思って始めましたが、それ以上に「想いの共有」という、設計しようとしたら難しすぎて諦めてしまうようなことが、自然と発生していることに驚きを隠せません。
つばめの森の、カメラの木。
紫波町写真部という名の、とあるSNSアカウントには、カメラを通して紫波町を発信し、そして、みんなで町を愛でたいという、控えめながらも筋の通った人々が集まります。
この森には、いくつもの木があって、「好き」「やりたい」というまっすぐな気持ちの幹を軸に、それぞれの色を放っていきます。たくさんの色の木が集まることで、森は豊かに彩られ、つばめが更に楽しそうに飛び交っていくのです。
私は、紫波町のそういう現象ひとつひとつに、心から魅力を感じています。
記事を書いた人
・伊東 唯(イトウユイ)
秋田県能代市出身。日本酒スペシャリスト・発酵食品ソムリエを取得。2児の母。
愛用のカメラはCanonEOSkiss/R/6D markⅡ。酒好きのカメラ友達募集中。
shiwapic Instagram:
https://www.instagram.com/shiwapic/