つばめの森編集部だより vol.3

まちと人とのつながりをデザインする
~COKAGE STUDIOさん

2022年3月にオープンした
「Tsubame no mori」。

森の中をつばめが飛び交うデザインが印象的な
本ウェブサイトを制作いただいたのは、
奥州市のデザイン会社
株式会社COKAGE STUDIOさん。

紫波町とのプロジェクトでともに歩んできたお話を、アートディレクター川島さん、ディレクター宮本さん、デザイナーの石上さんに伺いました。

(左から、宮本拓海さん、川島佳輔さん、石上梨乃さん)

COKAGE STUDIOと紫波町のつながり

川島 本当に、紫波町のみなさんとは、役場の方達と仕事している感覚がないですね。いい意味で!「ずいぶん、僕の意見が通るな〜!」とよく驚いています。

須川 だって、川島くんの作るもの、いいじゃないですか。

川島 ありがとうございます(笑)。
紫波町とのはじめてのお仕事は、「SAKE TOWN SHIWA PROJECT」の中で制作した冊子『ツギヒト』でしたね。

紫波町に古くから伝わり次世代へ引き継ぎたい物語を集める」というコンセプトで制作しました。普段は日本酒を飲んで楽しむのみ、というライトな方達に向けて、お酒の作り方など、もっと深いところまで知って、より一層好きになってもらえるような。読みやすい、お酒の教科書のような存在を目指しました。

冊子「ツギヒト」

紫波町らしい表紙にしたかったので、町内在住の型染め作家である小田中耕一さんに手がけていただいて。新酒ができた頃の紫波町の風景をイメージして、緑の杉玉がぶら下がる、月の輪酒造店が描かれています。

紫波町の伝統産業「酒」をテーマにしたポータルサイト「tsugihito(ツギヒト)」

タウンプロモーションとの関わりは?

須川 町内外の方に向けて紫波町の地域資源や魅力を発信するツールの一つとして、「タウンプロモーションブック」の制作をまずお願いしました。

川島 どんな方に見ていただきたいかを考え、特に転出が超過している10代後半〜20代の若い世代に手に取ってもらえるよう、イラストや写真を大きく使用して紫波町の魅力をより印象的に伝えるデザインに仕上げました。メインビジュアルはイラストレーターの熊谷奈保子さんに依頼し、紫波町の木「けやき」、花「ききょう」、鳥「つばめ」をモチーフに描いていただきました。

須川 その後さらに、ふるさと納税をしてくださった方へお礼の気持ちを伝える返礼ツールも依頼したんです。

宮本 当初は、結婚式の招待状のようなカードを送ることを想定していました。ただ、日々たくさん届く郵便物の中から、自分の家に置いておきたいものはどんなものだろう?と考えた時に、木が浮き出たら可愛いのではと、ペーパークラフトの案が出てきました。

ふるさと納税返礼ツール ペーパークラフト


これはあえて、組み立て上がると「紫波町」とは見えないような仕様にしたんです。でも実際イラストになっているのは紫波町の木や花や鳥、という。

須川 『ツギヒト』の冊子の表紙でも、「紫波町」の名前を前面に出すかの議論はありましたね。結局、絵と題字のみのシンプルな表紙になりました。読む人にも、「行政が公共のために作った冊子」というフィルターをあまり持たずに読んでほしくて。行政側が語るよりも、事業者や市民の方々をしっかりと紹介したほうが、紫波町の魅力はしっかりと伝わると思いました。「町のため」という思いを少なからず持っていても、口にするのは気恥ずかしい。だからこそ、それぞれの声をストレートに伝えるための冊子にしたかったんです。

川島 大きな声で言うのは気が引けますが…。事業者さんや市民の方々は必ずしも、いつも「○○町のため」と町を背負って活動や事業をしているわけではないですよね。主役は市民、活動してる人たちですから、それぞれの声や活動自体を全面に出す方が、みなさんのアイデンティティとして町をより誇らしく思えるのではないかと思いました。なのでデザインとしても、町の名前を目立たせるよりも、辿ってみたら「紫波町」だと気づく感じのほうがいいのではと。


須川 実際、このペーパークラフトはとても好評で、ふるさと納税のリピート率も実際上がったので、担当課が喜んでいました(笑)。

川島 それはとても嬉しいですね!

須川 紫波町のタウンプロモーションは、「ファンベース」というマーケティングの考え方を土台にしているので。紫波町に関わる人たちが、「紫波町いいよね」と言い合えるような場や、何かを好きな同士が、共感からつながれるような場を作ろう、となりました。そこで具体的に何をするかを考えるにあたり、COKAGEさんには大枠のコンセプトから一緒に考えていただき、プロジェクトのネーミング、ロゴやウェブサイトのデザインなどをお願いしました。

「Tsubame no mori」の名前の由来

宮本 サイトのイメージをはじめて聞いた時、紫波にあるコミュニティをつないで、関わる人を増やし、人がリアルに集っていくようなイメージが浮かんだので…集まる場を「森」と表現し、そこにつばめたちが集まっている状態を名前にしたのが「Tsubame no mori」と言うネーミングです。木がたくさんある、と言うよりは人同士がたくさん集っている状態を森と表現しているような感じです。

須川 今は愛称の「つばもり」と呼ばれたりして。もりにも、「杜」とか「森」とかいろんな漢字を当て込めるからいいですねという話にもなりましたね。つばめの森、と呼んでいることも多いですが(笑)。

川島 サイト全体としては、つばめの森公式LINEアカウントと共に運用するため、モバイル版をメインに使用することを想定して、石上とともにデザインしていきました。

ウェブサイト「Tsubame no mori」
「Tsubame no mori」ロゴ

デザイナー石上さんは、昨年度からはじめて紫波町とお仕事されてみて、どうでしたか?

石上  私は県外出身で、紫波町は町の名前だけ知っているという感じだったんです。
お仕事で紫波町に来るようになってからは、「おだやかで、いい町だなあ、今日も紫波は平和だな」と毎回思いながら打ち合わせに来ています(笑)。私はまだ社会人二年目で、打ち合わせはまだまだ緊張するんです。でも紫波町の方と話すのは、いい意味で行政らしくない感じで、とても楽しいです。
こういう方々がいるからこの雰囲気の場になっているんだなと思わせてくれますね。

(左から川島、石上)

川島 民間のアイディアもプラスにとらえてくれて、町の見え方をもっとよくしていきたいとか、広報を考えたいという前提から一緒に、やりとりしながら作っていけるのは、とても嬉しいしやりがいがありますね。

須川 信頼してます!

(左から須川、川島)

話を聞いた人:

川島佳輔(カワシマケイスケ)

1988年10月27日生まれ。奥州市出身。アートディレクター。

2017年に株式会社COKAGESTUDIOを設立し、

Cafe&Living UCHIDAを開業。好きな酒はビール。

https://cokage.co.jp/design

 
宮本拓海(ミヤモトタクミ)

1994年8月15日生まれ。岩手県奥州市出身。

2019年4月から企画・執筆・編集を行うフリーランスとして活動。

 
石上梨乃(イシガミリノ)

1998年11月5日生まれ。青森県八戸市出身。デザイナー。

盛岡の専門学校でグラフィックデザインを学んだ後、

2021年4月、株式会社COKAGE STUDIOに入社。

 
須川翔太(スカワショウタ)

1984年10月23日生まれ。紫波町出身。唎酒師公務員。

紫波町に酒コミュニティを作りたい。3児の父。

 

記事を書いた人:

あまのさくや

1985年5月5日生まれ。東京都中野区出身。

紫波町とチェコ共和国が好きな、絵はんこ作家・エッセイスト。

エッセイ本『チェコに学ぶ「作る」の魔力』を2022年5月刊行。

 

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